神鬼物語 ~愛しき、君よ~
黒歴史第二弾。
実は二つで一つの物語。
というか…
こっちが本編っぽいのが何とも言えない気分になっちゃう。
どっちも本編なのにね?
------------------------------------------
いつものように母の墓参りをするだけだったはず。
いつものように母に語りかけ、
いつものようにお参りをする。
それだけのはずだった。
今、母の墓の前に人間がいる。
正確には墓の前を移動している。
周りを警戒して移動しているせいか、移動速度が遅い。
そこで、ちょっとしたいたずら心が出てきた。
背後から声をかけたら、さぞ驚くことだろうよ。
「おぬしは何者じゃ?」
さぁ、どんな反応をする?
ああ、震えておるの。
色々思案しておるのじゃろうて。
「うわああぁぁぁぁぁぁ!!!」
少年は一目散に駆けだした。
当然の反応だろうと思いながら、後を追うことにした。
いたずら心はまだある。
ただ追うのではなく、先回りをしよう。
「逃げられるとぉぉぉぉぉ」
木から木へ飛び、あっと言う間に少年を追い越す。
「思ぉてかぁぁぁぁぁ!!!」
「ごふぉッ!?」
少年に勢いよく飛びついた。
「答えろ、おぬしは何者じゃ?なぜここへ来た?」
とりあえず脅してみる。
どうせ麓の村の子だろう。
遊びに来たか迷い込んだか、そんなところだろうと思っていた。
ここで初めて少年の顔を見る。
平凡ながらも純粋そうな顔。
何より、少年とは思えないような強い意志を秘めた眼。
「鬼を見に来た」
少年が答えた。
ここで我に返った。
どうやら少年に見とれていたようだ。
意外すぎる答えだった。
普通は遠ざけるもの。
そう教えられたから。
この少年はいわゆる例外と言うヤツだろう。
「ふふっ、そうか、それはすまなんだのう」
興味深い人間だった。
不思議と警戒心は無くなっていた。
二人は様々なことを話した。
嬉しそうに村のことを話す少年。
楽しそうに里の話を聞く少年。
(ああ楽しいな、ばあやや、他の物たちとは違う楽しさじゃ)
母上、吾に友達が出来ました。
そう、心でつぶやいた。
彼女の里に子供はいない。
里の者たちは親切にしてくれるが、それはきっと身分のせいかもしれない。
幼心にそう思っていた。
幼いが故の盲目。
幼いが故の思いこみではあるのだが。
夕刻、少年が帰らなければと言ってきた。
当然、少年にも帰る家がある。
少女にもある。
一応、念を押しておこう。
「吾に会ったこと、秘密にしておいてほしい」
約束だ、と指切りをする。
里の者以外、もっと言えば大人以外で指切りをするのは初めてだった。
少し緊張する。
顔が赤くなってないだろうか?
指切りをすませてそそくさと立ち去る。
それから、ほぼ毎日のように母の墓の前に行くようになった。
そこが少年との待ち合わせ場所。
少年と初めてあった場所。
いつ来るだろう?
今日はくるかな?
などと期待に胸を躍らせていた。
少年と遊ぶ時が楽しかった。
時には喧嘩もした。
その度に仲直りをした。
楽しい時間はずっとは続かなかった。
互いに成長し、互いに時間が取れなくなってきたのだ。
少女は里をまとめるために奮闘する日々が続いた。
たまに時間が取れて、墓の前に行くが、少年が来ることはなかった。
そんな日々が数年続いた。
少女は美しい女性となり、里の主として働いている。
時々、墓参りをしに母の墓の前へ行く事がある。
もしかしたらあのときの少年に会えるかもしれないと淡い期待を持ちながら。
「墓参りへ行くのに、まるで想い人に会いに行くみたいですねぇ」
そう言ったのは乳母である女性だ。
これには、さすがの女も焦った。
乳母が言うには、ある日を境に、上の空になることが増えたとか。
しかも、時々にやにやしているというのだから吾ながら気味が悪い。
観念して事情を言った。
乳母にならば分かってもらえるだろう。
そう思ったからだ。
「姫様はその殿方に恋をしておられますねぇ」
「こ…い…?」
恋。
そうか、吾はあやつに恋をしているのか。
良いことに気がついた。
乳母はすごいのぉ。
今日は会えるといいな。
いつも通り墓参りに行く。
墓の前に人間の男。
雰囲気で分かった。
あの少年だ。
気づかれないように背後に立つ。
「お主は何者じゃ?」
意地悪っぽく聞いてみる。
さて、どういう返事をしてくれるか?
少し期待してみる。
「鬼に、会いに来た」
あの時は『見に来た』だから、これは進歩なのだろうか?
この男は吾以外の鬼を知らないのだから、吾に会いに来たと言っているわけだが、腑に落ちない。
「なんじゃ、走らんのか、つまらんのう」
心にもないことを口走る。
彼の顔を見る。
あどけなさが残るものの、紛れもなく男になった逞しい顔。
当時と変わらぬ力強い瞳。
「久しいの」
「ん…」
久しぶりすぎて何を言っていいのか分からなくなる。
話したいことはいっぱいある。
だけど、言葉が出ない。
しかし…勇気を出して言う。
「昨日、乳母に言われた」
青年が彼女を見る。
まともに青年の顔が見れなくて、反射的に顔を背けてしまった。
「吾は恋というものをしているらしい」
勇気を出して。
「相手は…」
言わなければ…
麓の方から声が聞こえてきた。
きっと、彼を探す声だろう。
「すまねぇ、行かなきゃ」
「…そうじゃの…」
言えなかった。
たった一言が。
彼には彼の事情がある。
きっと、彼は村から信頼されているだろう。
彼は村に無くてはならない存在なのだろう。
そのことで、なぜか嬉しくも思えたが、言えなかった一言を考えるとやはり悲しかった。
その日以降、彼と会うことは無かった。
それでも、平穏な日々が続くかに思えたある日。
里では体調不良を訴えるものが増えてきた。
ある程度の医学を持つ彼女達だったが、それでも、最初の死亡者が出てしまった。
里のもの達は、麓の村のことが気がかりだった。
彼らが、自分達の里をおそいに来るのではないかと不安になった。
鬼である自分達が原因ではと疑われてはいないかと。
鬼の姫たる彼女が知っている人間はあの青年だけ。
あの青年は吾等を疑わない。
しかし、他の者は…?
おそらく、人間が来るのも時間の問題だろう。
それまでは、里の者達を看病しないと。
一人でも生きながらえるようにしないと。
彼女が必死になったところで、疫病の猛威は収まらない。
一人、また一人と死んでゆく。
ついに、最後の一人までも。
「姫様、どうか死に逝く我らを、姫様を一人残して逝く我らをお許しください…」
彼女は黙っていた。黙って手を握る。
「吾は恨んでおらん、憎んでおらん、心配するな、吾は…大丈夫だ」
優しく、語りかけるように話す、が
「ああ、姫様、我らをお許しください…姫様……」
思考が死んでいるのか、同じ事を繰り返す。
そして、静かに息を引き取った。
この日、彼女を残し、里の者は全て死に絶えた。
ここで、人間に殺されようか。
そう考えた。
大好きだった者達がいなくなった。
だがきっと、彼は吾の死を望まない。
もしかしたら村の裏切り者になるかも知れない。
それは駄目だ。
吾のせいでそんなことにはさせられない。
ならばどうする。
ならば…
森を歩く。
最後に、母上に、彼に会いたい。
彼に会いたい。
いつもの場所。
母の墓前。
彼は、いない。
「母上…吾は一旦ここを離れます。きっと…きっと戻ってきます故に…」
涙がこみ上げてくる。
できればずっとここにいたい。
ずっと居れるものだと信じていた。
しかし、現実は違った。
今回はわがままは許されない。
だから、最後に泣いて行こうと思います。
誰かが走ってくる音が聞こえた。
きっと彼だろう。
ああ、良かった、涙はもう出ていない。
顔を見られなければ気づかれない。
「下が騒がしいな」
とぼけてみせるが、彼には無駄だったようだ。
今にも泣き出しそうな顔をしている。
「吾の里でもたくさん死んだよ」
吾は何を言っているのだろうな?
「誰も…助けられなかったよ」
なるべく平静を装わなければ、彼に余計な心配をかけてしまう。
それは出きれば避けたい。
そう思っていた。
「吾等はここを捨て、別の地へ往く」
嘘を言う。
吾の他に生き残りがいることを彼に思いこませねば。
「先人達には申し訳ないが、吾等とて滅ぼされたくない」
特に、おぬしには…
もう会えないかもしれないから、言っておこう。
あの時言えなかったことを言おう。
「大好きだよ、おぬしが」
やはりと言うべきか、彼の顔が真っ赤になった。
なかなか面白いものじゃな。
「お、俺も!あんたのことが好きだ!大好きだ!!」
彼女は少し、思考停止してしまった。
彼もまた、自分に好意を寄せてくれていたことに舞い上がった気持ちになった。
「好き同士だったのじゃな、嬉しいよ」
なるべく表面には出さないで。
これで大丈夫。
その言葉だけで吾は生きていける。
「では、さよならだ。愛しき君よ」
「待てよ!!」
去ろうとするところで腕を掴まれた。
結構な力で。
彼は…泣いていた。
「泣かないでおくれ、愛しき君よ」
そっと抱き寄せる。
頭を撫でてやる。
落ち着いたのか、彼があり得ないことを言ってきた。
「俺も、ついて行っちゃだめか?」
一瞬、心が揺れた。
だけど、駄目だ。それだけはできない。
「駄目だ」
そうか、と彼は納得してしまった。
もう少し粘ってほしかったとも思ったが、これはわがままだろう。
ならば最後にこれをやってみよう。
「愛しき君よ、最後に、名を教えてくれ」
吾の里流の婚姻の儀
名を明かし、証となす儀。
当然彼は知らないだろう。
それはただの、彼女の自己満足だった。
「東馬(あずま)」
彼からの証は成った。
「吾は神鬼の姫、紅蓮(ぐれん)じゃ」
互いの証は成った。
たとえ自己満足でも、これで十分。
「未来、吾が叶わずとも吾の子が、孫が、子孫が、東馬の一族に会いに行く」
これは誓い。
いつか、必ず会いに行くという誓い。
今度こそ振り向かない。
捕まらないように全力で駆ける。
今度捕まったら、旅に出れる自信がない。
だから、全力で、出きるだけ遠くまで駆ける。
「今頃は里かの?」
そんなことを口走る。
荒らされないだろうか、とか、今更な心配ばかりが心をよぎるが、戻ることは出来ない。
今の自分は願うことしかできない。
いつか会いに行くと誓った。
ならば誓いを成就出来るように努力しよう。
彼はおそらく、いや、確実に待っていてくれる。
彼の信頼に応えられるように出来ることをしよう。
いつでも、彼に会いに行けるように。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~~ヽ::::::::::::|/
うん、自分が入れる穴はどこですか?
実は二つで一つの物語。
というか…
こっちが本編っぽいのが何とも言えない気分になっちゃう。
どっちも本編なのにね?
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「鬼なんて、夢物語だと思ってた」
「でもさ、それってさ」
「人間の都合なんだよな?」
「ああ、違う、こんなこと言いたいんじゃないんだ」
「あのさ…」
いつものように母の墓参りをするだけだったはず。
いつものように母に語りかけ、
いつものようにお参りをする。
それだけのはずだった。
今、母の墓の前に人間がいる。
正確には墓の前を移動している。
周りを警戒して移動しているせいか、移動速度が遅い。
そこで、ちょっとしたいたずら心が出てきた。
背後から声をかけたら、さぞ驚くことだろうよ。
「おぬしは何者じゃ?」
さぁ、どんな反応をする?
ああ、震えておるの。
色々思案しておるのじゃろうて。
「うわああぁぁぁぁぁぁ!!!」
少年は一目散に駆けだした。
当然の反応だろうと思いながら、後を追うことにした。
いたずら心はまだある。
ただ追うのではなく、先回りをしよう。
「逃げられるとぉぉぉぉぉ」
木から木へ飛び、あっと言う間に少年を追い越す。
「思ぉてかぁぁぁぁぁ!!!」
「ごふぉッ!?」
少年に勢いよく飛びついた。
「答えろ、おぬしは何者じゃ?なぜここへ来た?」
とりあえず脅してみる。
どうせ麓の村の子だろう。
遊びに来たか迷い込んだか、そんなところだろうと思っていた。
ここで初めて少年の顔を見る。
平凡ながらも純粋そうな顔。
何より、少年とは思えないような強い意志を秘めた眼。
「鬼を見に来た」
少年が答えた。
ここで我に返った。
どうやら少年に見とれていたようだ。
意外すぎる答えだった。
普通は遠ざけるもの。
そう教えられたから。
この少年はいわゆる例外と言うヤツだろう。
「ふふっ、そうか、それはすまなんだのう」
興味深い人間だった。
不思議と警戒心は無くなっていた。
二人は様々なことを話した。
嬉しそうに村のことを話す少年。
楽しそうに里の話を聞く少年。
(ああ楽しいな、ばあやや、他の物たちとは違う楽しさじゃ)
母上、吾に友達が出来ました。
そう、心でつぶやいた。
彼女の里に子供はいない。
里の者たちは親切にしてくれるが、それはきっと身分のせいかもしれない。
幼心にそう思っていた。
幼いが故の盲目。
幼いが故の思いこみではあるのだが。
夕刻、少年が帰らなければと言ってきた。
当然、少年にも帰る家がある。
少女にもある。
一応、念を押しておこう。
「吾に会ったこと、秘密にしておいてほしい」
約束だ、と指切りをする。
里の者以外、もっと言えば大人以外で指切りをするのは初めてだった。
少し緊張する。
顔が赤くなってないだろうか?
指切りをすませてそそくさと立ち去る。
それから、ほぼ毎日のように母の墓の前に行くようになった。
そこが少年との待ち合わせ場所。
少年と初めてあった場所。
いつ来るだろう?
今日はくるかな?
などと期待に胸を躍らせていた。
少年と遊ぶ時が楽しかった。
時には喧嘩もした。
その度に仲直りをした。
楽しい時間はずっとは続かなかった。
互いに成長し、互いに時間が取れなくなってきたのだ。
少女は里をまとめるために奮闘する日々が続いた。
たまに時間が取れて、墓の前に行くが、少年が来ることはなかった。
そんな日々が数年続いた。
少女は美しい女性となり、里の主として働いている。
時々、墓参りをしに母の墓の前へ行く事がある。
もしかしたらあのときの少年に会えるかもしれないと淡い期待を持ちながら。
「墓参りへ行くのに、まるで想い人に会いに行くみたいですねぇ」
そう言ったのは乳母である女性だ。
これには、さすがの女も焦った。
乳母が言うには、ある日を境に、上の空になることが増えたとか。
しかも、時々にやにやしているというのだから吾ながら気味が悪い。
観念して事情を言った。
乳母にならば分かってもらえるだろう。
そう思ったからだ。
「姫様はその殿方に恋をしておられますねぇ」
「こ…い…?」
恋。
そうか、吾はあやつに恋をしているのか。
良いことに気がついた。
乳母はすごいのぉ。
今日は会えるといいな。
いつも通り墓参りに行く。
墓の前に人間の男。
雰囲気で分かった。
あの少年だ。
気づかれないように背後に立つ。
「お主は何者じゃ?」
意地悪っぽく聞いてみる。
さて、どういう返事をしてくれるか?
少し期待してみる。
「鬼に、会いに来た」
あの時は『見に来た』だから、これは進歩なのだろうか?
この男は吾以外の鬼を知らないのだから、吾に会いに来たと言っているわけだが、腑に落ちない。
「なんじゃ、走らんのか、つまらんのう」
心にもないことを口走る。
彼の顔を見る。
あどけなさが残るものの、紛れもなく男になった逞しい顔。
当時と変わらぬ力強い瞳。
「久しいの」
「ん…」
久しぶりすぎて何を言っていいのか分からなくなる。
話したいことはいっぱいある。
だけど、言葉が出ない。
しかし…勇気を出して言う。
「昨日、乳母に言われた」
青年が彼女を見る。
まともに青年の顔が見れなくて、反射的に顔を背けてしまった。
「吾は恋というものをしているらしい」
勇気を出して。
「相手は…」
言わなければ…
麓の方から声が聞こえてきた。
きっと、彼を探す声だろう。
「すまねぇ、行かなきゃ」
「…そうじゃの…」
言えなかった。
たった一言が。
彼には彼の事情がある。
きっと、彼は村から信頼されているだろう。
彼は村に無くてはならない存在なのだろう。
そのことで、なぜか嬉しくも思えたが、言えなかった一言を考えるとやはり悲しかった。
その日以降、彼と会うことは無かった。
それでも、平穏な日々が続くかに思えたある日。
里では体調不良を訴えるものが増えてきた。
ある程度の医学を持つ彼女達だったが、それでも、最初の死亡者が出てしまった。
里のもの達は、麓の村のことが気がかりだった。
彼らが、自分達の里をおそいに来るのではないかと不安になった。
鬼である自分達が原因ではと疑われてはいないかと。
鬼の姫たる彼女が知っている人間はあの青年だけ。
あの青年は吾等を疑わない。
しかし、他の者は…?
おそらく、人間が来るのも時間の問題だろう。
それまでは、里の者達を看病しないと。
一人でも生きながらえるようにしないと。
彼女が必死になったところで、疫病の猛威は収まらない。
一人、また一人と死んでゆく。
ついに、最後の一人までも。
「姫様、どうか死に逝く我らを、姫様を一人残して逝く我らをお許しください…」
彼女は黙っていた。黙って手を握る。
「吾は恨んでおらん、憎んでおらん、心配するな、吾は…大丈夫だ」
優しく、語りかけるように話す、が
「ああ、姫様、我らをお許しください…姫様……」
思考が死んでいるのか、同じ事を繰り返す。
そして、静かに息を引き取った。
この日、彼女を残し、里の者は全て死に絶えた。
ここで、人間に殺されようか。
そう考えた。
大好きだった者達がいなくなった。
だがきっと、彼は吾の死を望まない。
もしかしたら村の裏切り者になるかも知れない。
それは駄目だ。
吾のせいでそんなことにはさせられない。
ならばどうする。
ならば…
森を歩く。
最後に、母上に、彼に会いたい。
彼に会いたい。
いつもの場所。
母の墓前。
彼は、いない。
「母上…吾は一旦ここを離れます。きっと…きっと戻ってきます故に…」
涙がこみ上げてくる。
できればずっとここにいたい。
ずっと居れるものだと信じていた。
しかし、現実は違った。
今回はわがままは許されない。
だから、最後に泣いて行こうと思います。
誰かが走ってくる音が聞こえた。
きっと彼だろう。
ああ、良かった、涙はもう出ていない。
顔を見られなければ気づかれない。
「下が騒がしいな」
とぼけてみせるが、彼には無駄だったようだ。
今にも泣き出しそうな顔をしている。
「吾の里でもたくさん死んだよ」
吾は何を言っているのだろうな?
「誰も…助けられなかったよ」
なるべく平静を装わなければ、彼に余計な心配をかけてしまう。
それは出きれば避けたい。
そう思っていた。
「吾等はここを捨て、別の地へ往く」
嘘を言う。
吾の他に生き残りがいることを彼に思いこませねば。
「先人達には申し訳ないが、吾等とて滅ぼされたくない」
特に、おぬしには…
もう会えないかもしれないから、言っておこう。
あの時言えなかったことを言おう。
「大好きだよ、おぬしが」
やはりと言うべきか、彼の顔が真っ赤になった。
なかなか面白いものじゃな。
「お、俺も!あんたのことが好きだ!大好きだ!!」
彼女は少し、思考停止してしまった。
彼もまた、自分に好意を寄せてくれていたことに舞い上がった気持ちになった。
「好き同士だったのじゃな、嬉しいよ」
なるべく表面には出さないで。
これで大丈夫。
その言葉だけで吾は生きていける。
「では、さよならだ。愛しき君よ」
「待てよ!!」
去ろうとするところで腕を掴まれた。
結構な力で。
彼は…泣いていた。
「泣かないでおくれ、愛しき君よ」
そっと抱き寄せる。
頭を撫でてやる。
落ち着いたのか、彼があり得ないことを言ってきた。
「俺も、ついて行っちゃだめか?」
一瞬、心が揺れた。
だけど、駄目だ。それだけはできない。
「駄目だ」
そうか、と彼は納得してしまった。
もう少し粘ってほしかったとも思ったが、これはわがままだろう。
ならば最後にこれをやってみよう。
「愛しき君よ、最後に、名を教えてくれ」
吾の里流の婚姻の儀
名を明かし、証となす儀。
当然彼は知らないだろう。
それはただの、彼女の自己満足だった。
「東馬(あずま)」
彼からの証は成った。
「吾は神鬼の姫、紅蓮(ぐれん)じゃ」
互いの証は成った。
たとえ自己満足でも、これで十分。
「未来、吾が叶わずとも吾の子が、孫が、子孫が、東馬の一族に会いに行く」
これは誓い。
いつか、必ず会いに行くという誓い。
今度こそ振り向かない。
捕まらないように全力で駆ける。
今度捕まったら、旅に出れる自信がない。
だから、全力で、出きるだけ遠くまで駆ける。
「今頃は里かの?」
そんなことを口走る。
荒らされないだろうか、とか、今更な心配ばかりが心をよぎるが、戻ることは出来ない。
今の自分は願うことしかできない。
いつか会いに行くと誓った。
ならば誓いを成就出来るように努力しよう。
彼はおそらく、いや、確実に待っていてくれる。
彼の信頼に応えられるように出来ることをしよう。
いつでも、彼に会いに行けるように。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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うん、自分が入れる穴はどこですか?
この記事へのコメント
悲しい結末にしかならない
それはよく分かってるんですけどね・・・
それはそうと、お忙しいんでしょうか?
また白騎士一緒に出来るといいですね。